2020年12月17日(木)
こまつ座公演 |
敗戦直後の昭和21年7月。
今よりもずっとラジオが人々の傍にあった。
日本放送協会の一室からラジオ番組「尋ね人」は始まった。
15分間の放送の中では戦争で離ればなれになった人々を探す
無数の"声"が全国に届けられた。
脚本班分室長である元アナウンサー川北京子をはじめとする三人の女性分室員は
占領下日本の放送を監督するCIE(民間情報教育局)の事前検閲を受けながらも
番組制作にひたむきに取り組んでいる。
そこへ日系二世のフランク馬場がCIEのラジオ担当官として着任。
そんなある日、彼らの元に一人の男が現れた。
自称・山田太郎と名乗るその男は言う。
「ラジオで私を探してほしい」。
次々と騒動が巻き起こる中、自分自身がわからない男の記憶が
ひとつひとつ明らかになっていく――。
これは戦後のラジオ番組「尋ね人」の制作現場を舞台に
「真実」にひたむきに向き合った、向き合うことから逃げなかった
誇り高き人々の物語である。
「私はだれでしょう。だれであるべきでしょう」
先行きがわからないときは過去をうんと勉強すれば未来は見えてくる
――――井上ひさし