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第92回例会

2016年9月19日

劇団青年座公演 

  横濱短編ホテル


マキノノゾミ氏が青年座のために書き下ろした一つ一つが宝石のようにきらりと光る素敵な短篇の芝居が七つ。
1970年から5年毎のオムニバス形式の劇になっています。
すべての劇が単独で上演でき、観終わった時にすべての芝居がネックレスのように繋がって一つの物語になっています。
ひこね演劇鑑賞会に入会して、このような素敵な演劇を年5〜6回観続けませんか?

(ものがたり)
出会い、別れ、憧れ、嫉妬、友情
男と女、男と男、そして女と女
時代の流れの中でそれぞれの運命がもつれ合う
横浜のとある老舗ホテルを舞台に
マキノノゾミ氏が12年ぶりに青年座に書き下ろした

(あらすじ)
物語は、横浜の老舗ホテルを舞台に7つの短篇で構成される。
7話がそれぞれ独立した短篇でありながら、観劇後はネックレスのように全てが繋がって一つのドラマになる。
青年座の中心的役割を担う俳優たちが贈る、キラリと光る宝石のような舞台


(製作・スタッフ)
作=マキノノゾミ
演出=宮田慶子
美術 =土岐研一
照明=中川隆一
音響=高橋巖
衣裳=半田悦子
ヘアメイク =鎌田直樹
舞台監督=尾花真
製作=森正敏 小笠原杏緒

(キャスト)
加門良 横堀悦夫  大家仁志 小豆畑雅一  豊田茂
桜木信介 前田聖太  小磯聡一朗
津田真澄 椿真由美  三枝玲奈 古澤華
世奈 那須凜

青年座公演「横濱短篇ホテル」魅力を知ろう会

日時 平成28年8月5日(金)13時30分から15時30分
場所 ひこね市文化プラザ 事務棟2階第2研修室
講師 小笠原杏緒(おがさわら・きお)

プロフィール
1984年東京都生まれ。
日本大学芸術学部卒業後、2008年劇団青年座(製作部)に入団。
これまでに製作を担当した公演は、『赤シャツ』(2009〜2012年)、『ほととぎす・ほととぎす』(2010年)、『THAT FACE』(2012年)、『横濱短編ホテル』(2013年)、『をんな善哉』(2013〜2015年)、『夜明けに消えた』(2013年)、『見よ、飛行機の高く飛べるを』(2014年)、『山猫からの手紙』(2015年)、『天一坊十六番』(2016年)。
近畿ブロックの例会作品としては『あおげばとうとし』(2009年)の製作を担当。
 



8月5日(金)13:30〜15:30ひこね市文化プラザで「横濱短篇ホテル」の魅力を知ろう会を開催しました。
講師には劇団青年座製作部の小笠原杏緒(きお)さんをお招きし、劇団のこと、青年座特有の作品を作っていく過程、芝居で使う道具や衣装の調達の仕方、7つの物語の見どころとつながりなど、小笠原さんの若さと新鮮さあふれるお話しを楽しく興味深く伺いました。
びっくりぽんなお話しを紹介しましょう。劇団青年座は創立時の「新作をやる」という理念が現在も守られていて作品はすべて新作依頼をして作っていくのだそうです。
そのプロセスはレパートリーを運営委員会で決め、それから作家を決め、演出家を決め、そのあとでどんなお話にするかを話し合って決める。
物語ができると俳優を決めるが、性格、人柄にあった役を作家から要望するそうで、配役が決まると告知板に貼り出されて皆に知らされる。
本人もそれを見て初めて自分が選ばれたことを知る。
そして練習しながらああしようこうしようとみんなで芝居を組み立てていく。
聞いていて何というユニークな進め方だろうと驚嘆してしまいました。
62年間も創立時の理念が受けつがれていることも眼からうろこで青年座の皆さんに強い興味と親近感を覚えました。
小笠原さんのお話は時々軽いジョークを飛ばし楽しく聞く人の心をつかみ終始会場から笑い声が絶えませんでした。
「これがモデルになった横浜のホテルニューグランドです」と大きな写真を広げられた時は言葉だけでなく映像の威力に引き込まれ皆が舞台を早く観たいという強い願望にかりたてられてしまいました。
ホテルニューグランドで考案された料理の紹介の場面では「プリンアラモードは1,000円ですよ?高いと思いません?
ナポリタンは・・・・・・」(その他幾品か紹介されましたが、男でそこそこ年の私にはメモすることすらできませんでした)。
今日は青年座の皆さんが精魂を傾けて作品を完成させておられる様子がひしひしと伝わってきました。
私達運営サークルもあと1カ月半情熱を傾けて前例会クリアしてお答えしたいと心動かされる素晴らしいお話しでした。
(ハーモニー 阿部)


事前学習会を終えて(アンケートから)【提出率60%】

◆2時間があっというまでした。劇団の事、作品の事、作品ができるまでの事、マキノノゾミの事、そして1970年代から年代を追ってのエピソードなど盛沢山で例会が益々楽しみになりました。青年座は「制作」がこの字ではなく「製作」と書くというその意味も深いなーと興味を持ちました。
◆素晴らしい。小笠原さんの演劇にかける情熱と人となりに感動しました。皆に伝え一人でも多くの会員を増やしたいと思いました。

◆舞台を多くの人達が苦労して作っておられる事を感じました。今まで漠然と観ていたと思います。美術や小道具など普段知ることができないようなことも話して頂きとても興味深く聞けました。
◆短篇が7つ、どんな風につながっていくのか楽しみです。小笠原さんの話ぶりに魅了されました。ここにきてよかったです。有難うございました。「魅力を知ろう会」にこれからはどんどん出席したいと思います。     
紙面の都合上、内容が類似の場合統合して掲載させていただきましたのでご了承下さい。
 

 

それぞれ七つのお芝居の年と登場人物の年齢とその時の立場(職業)を示します。
話が5年に進むたび、それぞれの登場人物は、皆歳を取り、それぞれの登場人物は、この5年間にそれぞれいろんな出来事、事件などが起きていたことが、暗示され、登場人物の人生もめまぐるしく変化していきます。
七つの小さな宝石のような話は、観終わったら、ネックレスのようにつながって一つの素敵な物語になっています。

第1話(1970年)から第6話(1995年)迄5年毎に進む舞台の時代背景 
各篇の登場人物 時代背景・流行語・流行歌
《第一話 ヤクザに追われて》1970年の初冬 客室
 芳崎正志(映画監督 30歳)=小豆畑雅一
 長谷川(帝都映画プロデューサー 35歳)=桜木信介
 奥山ハルコ(横浜北高校演劇部副部長 18歳)=那須 凜
  
・日本万国博覧会(大阪万博)開催
・三島由紀夫 自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺
・日航機「よど号」ハイジャック事件発生
・日本初の歩行者天国実施
・日本人(植村直己)エベレスト初登頂に成功
流行語「ウーマンリブ」「三無主義」「鼻血ブー」
「しらける」「人類の進歩と調和」
流行歌「黒ネコのタンゴ」「手紙」「京都の恋」
「圭子の夢は夜開く」「ドリフのズンドコ節」
  
《第二話 人間観察》1975年の夏 喫茶室
 柳井フミヨ(シナリオ作家志望の女性 23歳)=古澤華
 杉浦洋介(待ちぼうけの男 25歳)=横堀悦夫
 初老の男(喫茶室の常連客)=加門 良
 ウェイトレス=三枝玲奈
 芳崎正志(映画監督 35歳)=小豆畑雅一
 
・ベトナム戦争終結
・天皇のアメリカ合衆国初訪問
・沖縄国際海洋博覧会開催
・第二次ベビーブーム
・まんが日本昔話 TVで開始(〜94年)
・紅茶キノコブーム
流行語「アンタあの娘のなんなのさ」
「おじゃまむし」「オヨヨ」「ちかれたびー」
「わたし作る人、ぼく食べる人」「複合汚染」
流行歌「昭和枯れすゝき」「22才の別れ」
「シクラメンのかほり」「なごり雪」「ロマンス」
 
《第三話 脅迫》1980年の初秋 客室
 選手(在京球団の投手 29歳)=小磯聡一朗
 コーチ(同チームの投手コーチ 35歳)=豊田 茂
 
・イラン、イラク戦争勃発
・校内暴力・いじめ・登校拒否が社会問題化
・王 貞治現役引退
・山口百恵、三浦友和結婚  
・漫才ブーム「THE MANZAI」
流行語「赤信号、みんなで渡ればこわくない」
「竹の子族」「ぶりっ子」「省エネルック」
「カラスの勝手でしょ」「とらばーゆ」
流行歌「恋人よ」「オリビアを聴きながら」「昴」
「雨の慕情」「異邦人」
 
《第四話 初恋の人》1985年の初夏 ロビーラウンジ
 奥山ハルコ(女優 33)=椿真由美
 大野木健太(農業高校教師 ハルコの同級生 33歳)=大家仁志
 ウェイトレス=三枝玲奈

・「科学万博―つくば'85」開催
・日航ジャンボ機、群馬県御巣鷹山に墜落
・日本の総人口、約1億2100万人に
・プラザ合意でバブル景気へ
・日本語ワープロソフト「一太郎」発売   
・任天堂「ファミコン」ブーム 
流行語「金妻」「新人類」「フォーカスされる」
「タンスにゴン」「イッキ!イッキ!」「円高不況」
流行歌「ジュリアに傷心」「ミ・アモーレ」
 
《第五話 離婚記念日》1990年の冬 客室
 杉浦洋介(広告代理店勤務の男 フミヨの前夫 40歳)=横堀悦夫
 柳井フミヨ(柳井工務店専務 38歳)=津田真澄
 
・東西ドイツ、戦後45年の分断を経て統一
・今上天皇の即位(即位の礼)
・第1回大学入試センター試験実施
・水族館会館ラッシュ
・アマチュアバンドブーム
・バブル経済崩壊で株が暴落  
流行語「おやじギャル」「アッシーくん」
「成田離婚」「保健室登校」
流行歌「浪漫飛行」「踊るポンポコリン」
 
《第六話 プロポーズ》1995年の夏 ロビーラウンジ
 大野木健太(元農業高校教師 ハルコの同級生 43歳)=大家仁志
 コンシェルジュ=加門 良
 ケンタ(ハルコの息子 18歳)=前田聖太
 カオリ(ケンタの彼女 17歳)=世奈
 奥山ハルコ(女優 43)=椿真由美
 ウェイトレス=三枝玲奈
 
・東西ドイツ、戦後45年の分断を経て統一
・今上天皇の即位(即位の礼)
・第1回大学入試センター試験実施
・水族館会館ラッシュ
・アマチュアバンドブーム
・バブル経済崩壊で株が暴落  
流行語「おやじギャル」「アッシーくん」
「成田離婚」「保健室登校」
流行歌「浪漫飛行」「踊るポンポコリン」
 
《第七話 ネックレス》ある年の初夏 客室
 柳井フミヨ(脚本家)=津田真澄
 杉浦洋介(その夫)=横堀悦夫
 十八のフミヨ=古澤華
 十八のハルコ=那須 凜
 フロント係=小磯聡一朗
 長谷川(映画プロデューサー 35歳)=桜木信介
 奥山ハルコ(女優 フミヨの同級生)=椿真由美
 
現在? 


劇を観終わると、宮田慶子さんがおっしゃっていた「いい事ばかりではないけど、でもそうそう捨てたものじゃないよ、生きるって・・。」というメッセージに納得できるとっても後味のいい素敵なお芝居です。


脚本家のマキノノゾミ氏は、この「横濱短篇ホテル」を書くにあたって次のようにコメントしておられます。

『私には昔からささやかな野望がありました。それは、いつの日か「短篇の名手」と呼ばれることです。
今回の短編作品集を書くにあたっては、二つのルールを自分に課しました。
それは各篇が単独で上演可能であることと、もう一つなおかつ全体で一つの物語を構成することです。
私はいつも宝石のような芝居を作りたいと思い続けています。
私にとって素敵な芝居とは、美しく硬く結晶した宝石のようなイメージなのです。
今回は小さな小さなほんとうに小さな本当に小さな宝石を目指しましたが、少しでも誰かを微笑ませることができたならこれほどの喜びはありません。』



演出家の宮田慶子さんは、この「横濱短篇ホテル」を演出するにあたって次のようにコメントしておられます。

『マキノノゾミ氏とは2001年「赤シャツ」以来の青年座書き下ろし新作&コンビの復活です。
「横濱短篇ホテル」は、5年毎のオムニバス集になっています。
せつなく、おかしく、そして実は、かなり泣かせるロマンティックなラブ・ストーリーです。
1970年からスタートする、長い長い40年を越えての時の流れの設定は、その時代の空気感をつかもうとして、自然と、自分自身の来し方とオーバーラップさせながらのけいこ場となってしまいます。
第一話の「ヤクザに追われて」1970年の頃は、私は東京都内の私立中学校の1年生、第二話の1975年の頃は、進路に悩む高校3年生、第四話の1985年頃は、震えながら「ブンナよ、木からおりてこい」の初演出をしていた。
そして、1990年、1995年、現在・・。ホテルを舞台にいわば定点観察した登場人物達の人生と、自分の歩いてきた節目節目が重なり、古くからの親友のような気になってくる。
「お互い様、何だか色々あったよね・・」と思わず、芝居の中の一人と肩をたたき合いたい気分だ。
「いい事ばかりではないけど、でもそうそう捨てたものじゃないよ、生きるって・・。」と観ていただいた皆様と共に、うんうんとうなづき合えたら、私は幸せだ』










《第四話 初恋の人》1985年の初夏 ロビーラウンジ


《第五話 離婚記念日》1990年の冬 客室


《第七話 ネックレス》ある年の初夏 客室


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