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第82回例会

2014年10月15日(水)

文学座公演 

  女の一生

作:森本 薫
補訂・演出:戌井市郎
演出補:鵜山仁

出演:
赤司まり子、平 淑恵、松山愛佳、 藤アあかね、
松岡依都美、石川 武、 大滝 寛、今村俊一、
鈴木弘秋、 上川路啓志 ほか

装置:中嶋正留、照明:古川幸夫
音響効果:秦 和夫、衣裳:中村洋一
舞台監督:黒木 仁  
制作:白田 聡 


【ものがたり】
昭和20年10月のある夜。
焼け野原となった東京の一角に残る堤家の焼け跡に、
その日盛岡から上京したばかりの栄二が立つ。
やがて、栄二の耳に聞こえてくるあの懐かしい歌。
その歌の主こそ誰あろう、忘れもしない義姉のけいであった。
再開した二人の胸に過ぎ去った日々が甦る……。

―明治38年(1905年)―
日本がようやく近代的な資本主義国の姿をととのえ、
同時にその動向が世界の国々のそれと絶ち難く結び合い、反映し合いはじめた時代である。
戦災孤児の境涯にあった布引けいが、不思議な縁から堤家の人となったのは、そんな頃である。

清国との貿易で、一家を成した堤家は、しかし、その当主もすでになく、
後を継ぐべき息子達は、まだ若く、しずが、弟の章介に助けられながら、困難な時代の、一日一日を処していた。

やがてけいは、その闊達な気性をみとめられて、長男伸太郎の妻となる。
子とその肩に背負われるべき家を愛するしずの配慮であった。
あるいは母として、また主婦としてのしずの、愛という名のエゴイズムの結果であった。
伸太郎は絵を愛し、学問を好んだが、しかし家業を継ぐ意思と意欲に欠けていた。

次男栄二に寄せた思慕は断ち切られ、けいは正真正銘堤家の人となる。
そして、しずにかわって、けいは家の支えとなり、柱となる。
担いきれぬほどの重みにたえながら、けいはその“女の一生”を生きるのである。

―時は流れ昭和20年―
二つの大戦を経る激動の時代を生きて、今、焼跡の廃墟にたたずむけいの姿は、
過ぎ去った60年の月日の、激しさと華やかさを秘めて、哀しい――。




「女の一生」のみどころ

そりゃ、「女の一生」の見所は、なんと言ったって、第一にヒロイン布引けいの出来具合ですよ。時代は、日露戦争に勝ちの見えた明治38年冬から太平洋戦争に惨敗し、昭和20年晩秋まで丸40年。つまり大戦と大戦の間を取っているのです。
場所は東京。けいは、日露戦争戦勝祝いの日、中国相手の貿易商・堤家に闖入(ちんにゅう)します。二男栄治に咎められて身の上を語り、養家先を抜け出してきたという。結局、この家の女主人の温情で女中代りに置いてもらう事に成った彼女は、その働きと率直で明るい性格に依り女主人に認められて、後継ぎの長男伸太郎の妻に成ります。そして、女主人の願いどおり、商売に疎い夫に代わり、堤家の表の仕事を一人で切り盛りします。しかし、そのために自分の願いも性格も捨て、次第に計算高い実務家に成ってゆきます。ついに理解者は、この家の叔父のみ。家を守るため、夫、一人娘とも別居します。終幕彼女は、焼け野原の東京で、二男栄治と再会し、別々の人生ながら、再出発の手を取り合います。
 このヒロイン布引けいを演じて千回以上、名演を謳われて 杉村春子 は、文学座、いや日本新劇界の宝となりましたが、それを引き続いだ 平淑江 がどんな新ヒロインを創造するか、勿論基本造形は変わらないにしても、新派系の可愛さと艶麗を謳われた、杉村 の芸に対して、現代人に見合う演技を 平 がいかに打ち立てるか、第一の見ものです。
第二は、会話の妙です。作者は会話だけで人物の個性や生き様、さては時代の推移まで表そうとしていますが、日常会話の中でいかに自然に重要話題に移るか、その移り方の微妙さです。
第三は、時代の推移と人物の変化です。各役者は、40年間を一人で演じます。例えば、第一幕、若々しいおさげ髪の けい と栄治の出会い、終幕、老男女二人のしっとりした再会、どんな味わい深いことでしょう。
最後はセリフの妙です。「誰に選んでもらったのでもない、自分で選んだ道だもの」この けい のセリフに共感される観客も多いのではないでしょうか。

(沙羅 小野忠人)



「女の一生」運営サークル報告


20周年のお祝いの席での会員の素晴らしい舞台の感動がまだ冷めやらぬ8月初旬第1回運サ会議がスタートしました。
会議で「30名の新会員を迎え、正サークル3C増やしましょう」という目標と「1サークル1名の新会員を迎えましょう」というスローガンが決まりました。
「女の一生」は演目も俳優さんも超一流で期待に胸を躍らせ、メンバーでDVD鑑賞会を行い、台本をコピーして4冊を取り合うようにして回し読みしました。
9月17日には制作の白田聡さんを招いて「魅力を知ろう会」を開催しました。「見どころは平淑恵です」と伺って更に期待が大きく膨らみました。
猛暑や豪雨や2回の台風と闘いながらの拡大活動は思うように進まず、運サ担当メンバーの苦労は想像以上だったと思います。
そのような状況を打破しようと9月20日には幹事と運サ6名の有志による日夏地区の集中訪問作戦を実施しました。
入会はなりませんでしたが、皆で昼食を囲みながら今後に繋がる良い活動だった事をすがすがしく語り合いました。
活動結果は目標の30名に届きませんでしたが20名の新会員を迎えて前例会クリアは達成する事ができました。
運サ以外の会員や幹事、事務局が運サを後押しして下さったことで、やっとたどり着いた前例会クリアでした。
「前例会クリア」は、減った会員を運営サークルの力で取り戻すという意味で運サ活動の基本としている考えです。
例会の2日前に20人目の新会員を迎えたと聞いた時は思わず眼がしらが潤んでしまいました。
もうひとつの目標の正サークル数は2C増、2C減で計92Cは変わらずでしが、一人Cが正サークルになったのは喜びでした。
目標は叶いませんでしたが理想を持って大きな目標に挑戦した事はメンバー同士の協力を引出す働きをしたと思います。
運サ活動の数値面を総括しますと新入会員は運サで14名(9C)で拡大率は70%、クリア率43%、運サ会議の参加率は3回が70%を超えました。また複数参加が増えた事で運サ会議は毎回賑わいました。
特に良かった事は、入会して間のない新しい代表や複数参加した会員さんが積極的に新鮮な意見やアイデアを出して、楽しい話し合いができた事です。
お通しはお腹が膨らむようにとメンバーが配慮して沢山の方が手を上げて下さいました。
炊き込みご飯のおにぎり、パン、シフォンケーキ、稲荷ずし、さつま芋のお菓子、初物落花生のゆで物、ポテトサラダ、煮物など心のこもった手作りの品は12品目に及びました。
また今回も楽しい事をやろうと皆でアイデアを持ち寄って、「けい」が英二への思慕を断ち切る象徴として使われた「櫛」を作って俳優さんを驚かそうという話がまとまって最後の運サ会議で50本の「櫛」を皆で賑やかに作りとても楽しい思い出となりました。
ロビー交流会は搬出担当の俳優さん以外は全員(7名)出席されて交流を楽しむ事ができました。
文学座の皆様有難うございました。今回は「20周年記念式典の写真」を展示したり、送迎バスの中止に伴って急きょ会員さんへ送迎用の車をお願いしたり(ご協力に感謝します)、外部からの無断チラシ配布に事務局長が時間を割いて対応した事など、通常経験出来ない事も経験しました。
又、大小の失敗も致しました。「動けば必ずぼろがでる」とは名言と思いました。
作業に手間取り6時の開場時に受付け担当が配置できていなかった事や各部所を担当して下さる方との調整が不十分になった事等、反省点も上げられ、お詫び致しますと同時に今後の改善が必要です。
数多くの皆様のご協力に感謝します。



「女の一生」例会アンケート

▼しっかりした芝居でじっくり芝居に集中できました。
▼あの時代の中でほんろうされた男女の愛「ところで、まだ僕の戻ってくる部屋はあるのかい」「ありますとも。出ていかれたあの時のままの部屋にしております」この言葉に、はなれていた二人の愛の何十年間がこもっていて感動しました。
▼俳優さんが色々な年代を使い分けておられるのに感心しました。せりふが早口だったがよくききとれました。
▼「女の一生」の台詞で「誰が選んだ道でもない、私が選んだ道だから〜」戦後女と〜は強くなったと言われているが、戦前でも女性の一部?かもしれませんが“女の芯の強さ”を改めて感じました。私もこのように今後の余生を貫いて生けたらなーと思います。
▼男と女の夫婦のあり方が「女の一生」を通して語りかけてきており感動した。
▼時代は変わっても男と女の関係は永遠の問題。
▼色々な時代の女性の役に大変感動致しました。また次を楽しみにしたいです。
▼平さんが娘役から見事に変身して行く様に敬服した。50代のけいさんは貫禄があってとても大きく見えた。あの細い体から凛とした「どす」のきいた声がどうして出てくるのかと思う。とても魅力的でした。
▼初めて見ましたが、杉村春子さんと平さんが重なってしまいました。
▼長時間の上演を感じさせないほどの「女の一生」で、さすが長い間愛されてきた作品だなと思いました。杉村春子さんが演じた945回の舞台を引き継いだ平淑恵さんの布引けい。舞台の後半は杉村春子さんが演じているのかと錯覚しそうなほどでした。「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩き出した道ですもの、間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」。いつの世にも通ずる言葉で、何事にも前向きに生きようと元気と勇気を与えてくれます。
▼上質のお芝居でした。観劇後の清々しさがそれを感じさせました。お見かけとは真逆な、強い女性を見事に演じている平淑恵さんの演技力に感銘しました。これから杉村さんの様に何百回と続けられ、そして、10年後に益々円熟された布引けいが観られる事を楽しみにしています




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