第71回例会 2012年6月26日(火)前進座公演 歌舞伎十八番の内 鳴 神 (なるかみ)
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『鳴神』の本名題は『鳴神不動北山桜』といいます。そのうちの三段目「毛抜」、四段目「鳴神」、五段目「不動」が独立して、それぞれ歌舞伎十八番となっています。つまり、市川団十郎家のお家芸の一つです。
主人公の鳴神上人は朝廷に願い出た自分の望みが叶えられないのを恨んで、龍神を北山の滝壷に封じこめます。その結果、雨が一滴も降らず干ばつに見舞われます。それを解決するために朝廷が送りこんだ美女が雲の絶間姫です。つまり堅物の上人を色仕掛けと酒で欺こうという作戦です。その辺のやり取りが前半の見所です。
後半は、欺かれたと知った鳴神上人が怒りまくります。その怒りを表現する各種の見得が見所となります。前進座の鳴神は市川家の型とは違いますが、千回以上も上演をしている前進座歌舞伎の代表作です。元禄歌舞伎のおおらかさと様式美を堪能して下さい。
前進座公演「鳴神」の事前学習会
前進座公演「鳴(なる)神(かみ)」の事前学習会が4月3日、前進座の亀井栄(よし)克(かつ)さんを招いて開かれました。
亀井さんは「サスペンスドラマは結果が分かっていると面白くないが、歌舞伎はあらすじを知った上で観る方が奥深く理解できる」として、あらすじを詳しく紹介してくれました。
「鳴(なる)神(かみ)上(しょう)人(にん)は、天皇の依頼で皇子誕生の願をかけ、これが成就できれば寺院を建立してもらうと約束します。
しかし天皇が寺院建立の約束を破ったために、鳴神上人は朝廷を恨み、雨を降らす竜神を滝壷に封じ込めます。
そのため3ヵ月あまり雨が降らず国中が旱魃(かんばつ)に襲われ民衆は苦しんでいます。
そこで朝廷は美しい雲(くも)の絶(たえ)間(ま)姫(ひめ)を送り込みます。
上人を色仕掛けと酒で欺こう(あざむ)という作戦です。
鳴神上人は出家の身でありながら姫の色香に惑わされ酒に酔いつぶれ眠ってしまいます。
その隙に姫は滝壷に張ってある注連(しめ)縄(なわ)を切ります。
すると竜神がそこから飛び出し豪雨となり、姫はその場を逃げ去ります。
雨の音で目が覚めた上人は騙されたことに気づき怒りを爆発、髪は逆立ち着ている物は炎となって姫の後を追いかけていきます」
前半の見所は、雲(くも)の絶(たえ)間(ま)姫(ひめ)が堅物の上人を色仕掛けと酒で欺こう(あざむ)とするやり取りで、後半の見所は、欺かれた鳴神上人が激しい怒りを表現する各種の見(み)得(え)です。
そして、最後の見所は、花道を勇壮な鳴物に乗り、「飛び(とび)六法(ろっぽう)」を踏んで退場するところです。「飛び六法」は片手を大きく振りかざし力一杯走っている様子を表現して、勢いよく足を踏み鳴らしながら花道を引っ込む芸で、「勧進帳」でも最後の見せ場となっています。
幕が開くと花道から白雲坊と黒雲坊の二人が登場しますが、彼らは芝居を進行させる大切な役で、「聞いたか聞いたか」で登場するので「聞いたか坊主」と呼ばれるそうです。
亀井さんの話では以前の公演で、小坊主がとんぼ返りをした途端にカツラが外れて転がり会場騒然となるハプニングがあったそうですが、彦根公演では無事に進行されるよう願いたいものです。
(徳永サークル 徳永 博)
前進座の亀井栄克さんをお迎えして 【開催日】 4月3日 (火) 午後2時 ~ 【開催場所】 ひこね市文化プラザ 2階 研修室 運営サークル担当の佐竹さんの司会ではじまりました。 和服の着流しにわざわざ着替えて登場された亀井さん。 はじめに簡単な自己紹介をされました。出身は姫路。 日大の芸術学部を卒業。卒業公演が前進座劇場であったのが縁で前進座養成所に入所。1年間の研修の後入座して18年ということです。 話の内容を簡単にまとめますと次のような内容でした。 |
歌舞伎は難しいとか格式が高いとか言われますが、もともと出雲の阿国(おくに)が京都・鴨川・河原で400年ほど前に始めた舞踊りが起源でいろいろの変遷を経ていまのような形ができたのですが、ずっと民衆が支えてきた結果で庶民のものであると言うことを改めてご理解いただきたい。
決して高尚なものでもなんでもないので身近に感じていただきたい。
「鳴神」は歌舞伎18番のひとつと言われます。18番は七代目団十郎が決めたものです。
歌舞伎には時代物や世話物、和事や荒事などといわれますがはじめはあまり気にせずに気軽に入ってください。
ことばもわかりにくいことがあると思いますがこだわらないでどんどん先についていってくださるのが良いと思います。
(ここで簡単なあらすじの説明がありました―‐長くなるので省略します。)
今日着物姿で出てきたのは簡単な歌舞伎の所作をお見せしたかったからです。
たとえば「女の所作」。(つき襟にして内股で歩く所作をされて)女性そのものをあらわすのでなく女らしさを出すことが大事です。
男役は男役の所作があります。いかに女らしいかいかに男らしいかと言うところを見ていただけるとありがたい。
質問に答えて歌舞伎の「にらみ」を見せてくださいました。
目をかっと見開いて片方の黒目だけを鼻のほうに寄せるという至芸に一同唖然。
いくつかの裏話があり歌舞伎が一段と身近になり鳴神公演が本当に待ちどおしくなった学習会でした。
余談ですが講演中に天候がにわかに急変し外は真っ暗になりヒョウがバンバンと窓を打ったときは「鳴神」がやって来たのではないかと一同ちょっと青くなりました。
( ファーマーズ1 大森)
前進座公演「鳴神」の事前学習会アンケート
●私が演劇鑑賞会に入った時の作品はとても印象の薄いものでしたが、次の三人吉三巴白浪はとても感動して「演劇鑑賞会、なかなかやるなー」と思いなおした作品でした。今日の勉強会で「鳴神」のストーリー、歌舞伎の歴史、楽しみ方、又、日頃なにげなく使っている「十八番(おはこ)」「荒事(あらごと)」などの言葉の出来た意味など盛り沢山のお話と、会員の無理な「にらみ」などの注文に、困った顔をされながらも応じて、楽しくお話してくださいました亀井さん、ありがとうございました。歌舞伎は興味がありますが、なかなか観る機会がないので次の例会がますます楽しみになってきました。嵐の中、又、ご多忙な中、彦根まできていただき感謝です。
●いやいや素晴らしい学習会でした!歌舞伎の成り立ちからセリフまで、とてもよくわかるお話で、歌舞伎への理解が深まりました。少し誤解していた部分もあったのですが、今日のお話で、本当に400年も続いていることの理由がわかりました。やはり庶民といいますか「みんなのもの」ということなのでしょう。こんな素晴らしい舞台が観られる演鑑は本当に有難いです。
●まじめな鳴神上人がひめの色仕掛けに落ちるシーンが見ものとか。地方ではめったに観られない歌舞伎公演ですので楽しみにしております。歌舞伎は難しいものとの先入観がありましたが、歴史を含めた亀井さんのお話で娯楽性の強いものと知りました。公演を気楽に楽しみます。
●歌舞伎入門のお話として歴史もわかりやすく亀井さんの人柄が感じられた。要は気楽にお芝居をみてほしいと言われたが、その通りである。役者さんの細かい動き、所作を表現してみせていただいたが成程と思った。
荒事、和事など用語(歌舞伎)も教えていただき楽しかった。(芸をつけての説明、それもわざわざ着物に着替えての熱演で嬉しく思いました。)
●歌舞伎の基本をお聞きして大変参考になった。今までは知識もなくむずかしいものだと思っていたが、楽しくわかりやすくして下さったのでたのしみに観させて頂きます。事前学習会に参加させていただきうれしく思いました。
●「鳴神」の謂われが良くわかりました。例会が楽しみです。もちろん亀井さんのご出演楽しみです。
●歌舞伎を全く知らなかったので時代物、世話物などのセリフの違い 荒事、和事の違いが大変判り易く興味深かった。歌舞伎の背景も知り、ちょっと難しい物と思っていたのが大衆演芸であり眺めているだけで良いという説明を聞いて楽しみに思う。
●以前京都で梅之助さんの「鳴神」を観たが、面白いと思わなかった。覚えているのは、滝、シメナワ切り、白の厚手の着物等です。今日具体的に面白く(実演入り)やって頂いてきて良かったとおもいます。本番も楽しみになった。
●歌舞伎って?難しい、なじみがない、高尚なイメージです。今日の学習で歌舞伎の歴史、伝統芸能の深さを知ることができました。「鳴神」の演目に上乗せした様に、外の天気(ひょう)も演出してくれたかの様で、ひとしお効果があり素晴らしい事前学習会でした。ありがとうございました。