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第６３回例会

「クリスマス・キャロル」例会の事前学習会

劇団昴の荒川秀樹さんを囲んで

11月6日（土）市民会館会議室にて劇団昴の荒川秀樹さんを囲んで「クリスマス・キャロル」例会の事前学習会をおこないました。
参加者は11運営サークル15名と運営サークル以外8サークル8名の計23名でした。
　劇団昴の公演はひこね演劇鑑賞会では初めてです。学習会で劇団昴の成り立ちや、昴が目指している演劇について語られました。
「昴では、役者は演技に技術だけでなく人間形成が大切だと考えています。昴の演劇はアンサンブル芝居です。作品を完成させるためにみんなで分担しながら自分の役割を果たす。『クリスマス・キャロル』では19名の役者がでます。舞台上では街を行きかう何も語らない通行人の役があります。それぞれの人生を歩んでいるところをぜひ観て欲しいです。
『クリスマス・キャロル』は百年以上も演じられてきた古典です。残念ながら昴では今年の公演が1991年から続けてきたラスト公演となります。全力で演じますので楽しみにしてください。」
ほかにも荒川さん語録ができるくらい演劇について熱く語って下さいました。
「小説は情景が描かれているけれど台本は台詞だけで、演劇はその行間の空白を埋めていく」「芝居は観て終わるのではなく、観終わってからが始まり」とあらためて演劇の魅力を確認するお話でした。そして今度の『クリスマス・キャロル』を観る側の姿勢も問われていると感じました。
講演していただいた荒川さんの自己紹介の一文から『私にもひとつだけキメ事にしていることがあります。それは折角この世に出てきたのだから出来るだけ多くの人と会っておきたいということです。大変な偶然で同時代を生きている人を見知っておきたい。思い出は遊び相手になればこそ、邪魔にはなりません。そして思い出の最先端に“今”があるとしたら日々を大切にしたい。まあそんなことです。私たちは芝居通じて一時に多くの方との出会いを可能にします。それは私のキメ事からすると願ってもないことで大変な役得だと思っています。』
と荒川さんの人柄がにじみでるような学習会でした。

　【原作者：チャールズ・ディケンズについて】

　この原作は1843年のイギリスでチャールズ・ディケンズによって書かれたものです。ディケンズの他の代表作品の一つに「オリバー・ツイスト」があります。どちらも映画化されており、「クリスマス・キャロル」は1951年にアメリカで白黒映画として作られ、最近では2009年にディズニーがアニメ映画にするなど、8作品も映画化されています。また、イギリスやアメリカではほとんどの劇団がクリスマスの季節に公演しています。
　なぜ160年前の作品がいまも多く演じられ、映画化されているのでしょうか。
ストーリーは、不況にあえぐロンドンで、クリスマスイヴにケチで頑固な老人スクルージが3人の精霊と出会い、自らを悔い改め心を開いていくお話です。
　ディケンズは、不況のイギリスで、貧しい生活の中から作家として名をなした人物です。貧困の矛盾と悲惨さを深く経験していたことから、特権階級の高みから見下ろす形で道徳を説くのではなく、貧しい人々、抑圧された人々と同じ次元に立って、肉声で理想を語り、キリスト教的な人間愛、博愛を通じて社会を変えていきたいという思いが作品に出されているのではないでしょうか。
ディケンズは文盲の人々にも自分の作品が読めるようにと、イギリス、アメリカで朗読会を開き啓蒙の促進にも努力してきました。
　クリスマスには欠かせない作品である「クリスマス・キャロル」……劇団昴がどのように魅せてくれるのか楽しみです。
　追伸、運営サークル会議で「クリスマス・キャロル」ってどういう意味ですか？との疑問が出されました。調べてみると、キリストの誕生を祝って歌われるキャロル（祝歌・賛歌）の一種だそうです。
　さて、この物語の主役であるスクルージを通じてクリスマスを祝う本当の意味が見つかるかもしれません……

チャールズ・ディケンズの生きた時代（1812〜1870）
（クリスマス・キャロル─1843年執筆）

産業革命、その光と影

　クリスマス・キャロルの作者チャールズ・ディケンズの生きた1800年代のイギリスは、18世紀後半より起こった産業革命により、生産的にも経済的にも当時のヨーロッパにおいて最も発展した国へと変貌を遂げた。工場制機械工業の導入は、それまでの農業社会を工業社会へと変え、蒸気機関の発達により海軍力を強化し、遠洋可能な蒸気船を使って世界各国に植民地を広げ、その植民地から仕入れた原材料を本国の工場制機械工業で製品化して各国へ輸出を行なう。まさに現代資本主義社会の基礎を築いたのがこの当時のイギリスである。
しかし飛躍的な進歩による国力増大の影には様々な社会問題が起こったのもまた事実として捉えねばならない。
イギリス国内では、当初は安定した生活様式から都市では人口が急激に増えたが、やがて機械による生産は熟練した職人から仕事を奪いつつ安い賃金で女性や子供を使う為、資本家と労働者の間の貧富の格差は広がり、失業者が増え、更には長時間労働による栄養障害から伝染病が蔓延して都市にはスラムが形成される様になる。また農民たちも、これまでの農業政策（囲い込み等）により農業を続けていく事が出来ずに職を求めて都市に流れ込んでいく。
国外においては、更なる国力増大と資本家の儲けを優先するあまり、植民地への税の加算（これによってアメリカ独立戦争へとなるがイギリスが敗北し、アメリカの独立を認める事となる）、そして清国に麻薬貿易を強要してアヘン戦争を引き起こし、更には武器輸出によって他国の内乱を誘発する事になる（幕末の日本）。
その頃の世界情勢
　その頃ヨーロッパでは、世界初の王政打倒による市民革命によってフランスが共和政治を始めるも、ロベスピエールなどによる革命推進のリーダーの恐怖政治によって途中頓挫し、革命輸出を名目にヨーロッパ征服を始めたナポレオンが台頭する事となる。やがてそのナポレオンも一時はヨーロッパほぼ全土を支配下に治め、皇帝となってフランスに帝政を敷くも、ロシア遠征での敗北をきっかけに落日の憂き目に会う事となる。その後フランスは、王政を復活させるが再び革命がおき、第二次共和制、更にはナポレオン三世による第二次帝政へと激動を繰り返してゆく。
　ロシアを含め、他のヨーロッパ諸国は、ナポレオンの支配から解放された後もフランスの激動の波及を受け、革命の火種を燻らせながら離散統一を繰り返し、国家としての建て直しを図ってゆく事となる。
この時代になるとイギリスは自国の技術を諸外国に輸出し始め、少なくともヨーロッパ諸国は、イギリスによる産業革命とフランスによる市民革命の二つの体質の違う革命の洗礼を受ける事となる。

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