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第55回例会

2009年6月11日(木)

前進座公演 

 さんしょう太夫−説教節より− 

   出演 小林祥子、竹下雅臣ほか

中世の深い闇に現れた漂泊の説経師たち。
語るは、消えることのないこの国の民衆の憤りと悲しみであった。 

語るは、消えることのない民衆の憤りと悲しみであった。
伝説の説経師たちが帰ってくる―――

 



「さんしょう太夫〜説経節より〜」前進座

 どこからともなく舞台にあつまった説経師が、金森地蔵のいわれとして、あんじゅ(以下安寿)とずし王(以下厨子王)の物語をかたりはじめる。説経師が、安寿を、厨子王を、二人の母玉木を、人買いを、さんしょう太夫を演じ、また、説経師にもどっていく。
皆様には、おなじみの物語ですよね。安寿と厨子王の父は、帝の勘気をこうむって、筑紫へ流浪の身、母玉木は安寿、厨子王を伴って、都へ上り帝に許しをこうて所領安堵しようとして、奥州からでて、越後の国までついた。
ここで、母、姉弟は、人買いにさらわれ、母は佐渡へ、安寿と厨子王は、丹後の国さんしょう太夫に売られ、母、姉弟は別れ別れになる。さんしょう太夫の元で、安寿は潮汲み、厨子王は柴刈りをさせられるが、二人にはつらい仕事である。厨子王が逃げようと相談しているところをさんしょう太夫の息子三郎に聞かれ、二人は、額に焼金をあてられる。母が二人につけたお守りの地蔵菩薩が、二人の焼金を引き受け、二人の額からは焼金の後が消える。
安寿は、厨子王を逃がす。逃がした安寿は、さんしょう太夫から火責めにあって死んでしまう。逃げた厨子王は、梅津院の養子となり、帝に許しを得て丹後五郡の所領をもらう。丹後の国司となった厨子王は、さんしょう太夫の首を息子の三郎にのこぎり引きで殺させる。佐渡ではめしいとなった母が、鳥をおうている。母を捜し当てた厨子王が、地蔵菩薩を母の目に当てると、母は、目が開き、母子はひっしと抱き合うクライマックス。
森鴎外作「山椒大夫」では、安寿は、入水自殺をし、山椒大夫は悔い改め裕福になってゆきます。説経節は、母子の別れ、姉弟の別れもですが、鴎外作より、姉安寿を殺された弟厨子王の復讐物語となっています。
 つらい仕事を引き受け、理不尽な目に合わさられた、民衆がふと思う「親方を殺したい!!」と感情のカタルシスでもあったのでしょうか、この物語。親子の別れ、姉弟の理不尽な別れ、姉の死に涙し、さんしょう太夫に対する復讐に喝采しながも、この物語を作り、かたる説教師の存在をかたときも、忘れないような舞台。なんのために、この物語が作られたのであろうかを意識せざるを得ない知的な味付けもなされてもいる。
*さんしょう太夫とは、「散所太夫」すなわち「散所」の長者の意味であろうと言われている。ところで、この「散所」とはなんでしょうか。いろいろ説がわかれてまして、労役等を提供することによって、税を免除される給田であろうとの説があります。

                                                       幹事:岡田 富美夫

あらすじ 

◆◆ ものがたり ◆◆ 

平将門の孫、奥州五十四郡の主、岩城判官正氏はみかどの勘気をこうむり、筑紫の国(九州)太宰府に流人の身。
妻の玉木は、あんじゅとづし王を伴ない、乳母を供に、夫の安否をたずね、みかどの許しをこうため、京へ向かって旅立ちます。
ところが、越後の国(新潟県)直井の浦(直江津)にさしかかった時、人買いの山岡太夫にだまされ、玉木と乳母は佐渡へ、
あんじゅとづし王は丹後の国のさんしょう太夫のもとへ、別れ別れに売られてしまいます。
さんしょう太夫に売られた姉弟は、名も「しのぶ」「わすれぐさ」と改められ、なれぬ汐汲みと柴刈りに追いたてられ、つらい悲しい日々を送るのでした。
ある日、太夫と息子・三郎のむごい仕打ちに耐えかねたあんじゅは、肌の守りの地蔵菩薩の加護と、仲間の奴婢たちの助けを借りて、づし王を逃がします―――


森鴎外の小説でおなじみの“あんじゅとづし王”の物語。1974年に劇化。
しかし、前進座の『さんしょう太夫』は森鴎外作とは違って、中世に語られた原話・“説経節”より劇化しています。
お芝居の構成も、漂白の説経師たちが現れ、日本古来の楽器の生演奏にのせて、物語を語るというスタイルをとっています。
翌年には芸術際優秀賞を受賞した前進座の代表作の1本です。


説経節とは、中世の頃、人の多く集まる社寺の前など街頭で、庶民相手に仏の教えを広めるために語られた物語、節談説経。
当時、仏典そのものを聞かせても理解することが難しく、物語に仮託して伝えるという方法をとっていました。

● スタッフ 
  作      ……   ふじた あさや 
  演 出    ……  香 川 良 成 
  音 楽    ……   平 井 澄 子 
  音楽補    ……   高 橋 明 邦 
  美 術    ……   西 山 三 郎 
  美術補   ……   高 木 康 夫 
  照 明    ……   寺 田 義 雄 
  音 響   ……   田 村   悳 
  振 付    ……   嵐   芳三郎 
  振付指導 ……   藤 間 多寿史 


● 配 役 

あんじゅ      小 林 祥 子 
づし王 竹 下 雅 臣 
母・玉木   妻 倉 和 子 
うば竹 前 園 恵 子
山岡太夫 志 村 智 雄 
山岡太夫の女房 高 柳 郁 子
佐渡の二郎 柳 生 啓 介 
宮崎の三郎  又 野 佐 紋 
さんしょう太夫 藤 川 矢之輔
二郎  瀬 川 菊之丞 
三郎   松 浦 豊 和
奴 藤太 武 井  茂 
国平 又 野 佐 紋
犬丸 柳 生 啓 介 
石 田  聡 
松 永 ひろむ 
上 滝 啓太郎
藤 井 偉 策
婢 伊勢のこはぎ 北 澤 知奈美 
よしの 高 柳 郁 子 
ふるな 前 園 恵 子
国分寺の聖 志 村 智 雄 
ほかに奴、家人、従者など 大勢

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