もどる

第51回例会

2008年8月26日(火)

 俳優座公演 

『三屋清左衛門残日録』

〜夕映えの人〜

作/藤沢周平 脚本/八木柊一郎 演出/安川修一

【出演】
可知靖之 荘司肇 児玉泰次 立花一男 伊東達広
森 一 島英臣 内田夕夜 塩山誠司 志村史人 
齋藤淳 川口敦子 清水直子 佐藤あかり 
さとうさゆり 森尾舞 生原麻友美


2002年10月に上演し好評を得た、名作短編の舞台化「きょうの雨 あしたの 風」に続き藤沢周平の傑作長編を八木柊一郎脚本、安川修一演出「三屋清左衛 門残日録〜夕映えの人〜」として皆様にお届けする俳優座創立60周年記念の話題作です。

前藩主の用人であった三屋清左衛門を主人公に、現役を退いた人間の寂寥感と 清左衛門をとりまく旧友金井奥之助や町奉行佐伯能太たちとの友情・裏切りや 小料理屋の女将みさとの淡い愛情を通して人生の夕暮れに顔をそむけず夕映え に向かって真っ直ぐに歩む主人公の清々しさを情緒豊かに描きます。

 

「三屋清左衛門残日録〜夕映えの人〜」の公演によせて

 「三屋清左衛門残日録」藤沢周平原作、俳優座公演で、この組み合わせは、「きようの雨、あしたの風」に続き2回目である。前回は市井もの、今回は武家ものという違いはあるが。
 主人公の三屋清左衛門は、東北の小藩で用人の重責を担っていたが、仕えていた先代藩主の死去を機に用人の職を辞し、家督を息子に譲った。隠居の身となり悠々自適の生活を送るはずだったが、もろもろの手続きが終ったあとに強い寂寥感がやって来たのは、清左衛門にとって思いがけないことだった。 「勤めていたころは、朝目ざめたときには、もうその日の仕事をどうさばくか、その手順を考えるのに頭をいためたのに、隠居してみると、朝の寝ざめの床のなかで、まずその日一日をどうすごしたらいいかということから考えなければならなかった。君側の権力者の一人だった清左衛門には、藩邸の詰所にいるときも藩邸内の役宅にくつろいでいるときも、公私織りまぜておとずれる客が絶えなかったものだが、いまは終日一人の客も来なかった」
 時に三屋清左衛門は52歳、現代でいうなら60何歳にあたろうか。定年退職者の生きざまとダブってくる感じがする。藤沢周平は亡くなる4年前の1993年、城山三郎との対談で、「あれ、実は城山さんの新聞連載小説"毎日が日曜日"が遠いヒントになっているんですよ」と語っている。
 清左衛門は、日記をつけることとし、「残日録」と題をつけた。長男又四郎の嫁里江が「いま少しおにぎやかなお名前でもよかったのでは、と思いますが」と控え目に批判するのに対して「なに、心配はない。日残リテ昏ルルニ未ダ遠シの意味でな。残る日を数えようというわけではない」とかわしている。
 清左衛門隠居後はじめての客は、町奉行の佐伯熊太であった。元服前からの道場仲間で何をしゃべってもかまわない、ごく少数の友人の一人である。元用人の権威と現在隠居という身軽さをあわせ持つ清左衛門だからこそ解決できる微妙な問題の解決を頼みに来たのだ。
 「三屋清左衛門残日録」は1985年(昭和60年)から88年にかけて「別冊文藝春秋」15回連載された。一話完結の連作で、身内の悩みから藩の政争に至るまで清左衛門が縦横無尽に活躍する様が描かれている。
 脚本の八木柊一郎は、「主人公とその周辺の人物が全体を通して登場するものの、小説の妙味はあくまで別々の主題をもった十五篇のなかの人間描写にある。どの人物を実際に登場させ、どの話を省略するか、それを決断するのが至難のわざだった」と告白している。 
 なお、小料理屋の「涌く井」とおかみのみさは、原作以上の位置づけのようだが、そこで出される料理の数々、たとえば、クチボソカレイ、はたはたの湯上げ、蟹の味噌汁、赤蕪の漬物などは、藤沢周平の故郷山形庄内の味そのものとなっている。
                                              ひこね演劇鑑賞会 代表幹事:八田光男

8月例会 三屋清左衛門例会アンケ−トのページ

アンケ−ト回収 77枚
 たいへん良かった ・・・・・48
 良かった・・・・・・・・・・26
 あまり良くなかった・・・・・・2 
 良くなかった・・・・・・・・・1

 50代・・・22   男性・・・・6
 60代・・・27   女性・・・64
 70代・・・11   なし・・・・7
 なし・・・・17

 <ひとくち感想>
★久し振りの時代劇・感動しました。
★なかなか味が有って良かったです。
ひき込まれました。
★時代劇も久しぶりに良かったです。 きものすてきです。
★うしろの方に座っていたので台詞が聞き取りにくかった。
★和服のお芝居は、とても見ごたえがあり、本当にきれいで良かった。 ありがとう。
★前の席に座っていたので、役者さんの動き、表情がよくみえ、とても良かった。簡単な舞台装置なのに良かった。情景の変化が、とても、うまく表現できて、おもしろいと思いました。
★始まる直前に藤沢作品と知り期待した。始めのうち台詞がききとりにくい所があったが、時代推理小説的でドキドキした。でもひとつ腹が立った。最後の拍手が早い。もっと暗い中での余韻を、楽しませてほしい。
★舞台が、すっきりして、どのように表現されるのか楽しみにしていました。それぞれのすばらしい演技に心うたれ、楽しゅうございました。熱演感謝いたします。ありがとう。
★時代劇ファンで藤沢さん作品を楽しみにしていました、前で観せて頂けて男らしく、女らしさ、観いって一つ一つの動作に感動いたしました。着替える数も多くて楽しめました。ほんとうに良いお芝居でよかったです。
★三屋清左衛門役の児玉泰次さん、優しさと男らしさと、落着きを感じ、みさ役の川口敦子さんの憂いを満ちたお二人の演技、昔の男女のロマンを夢みさせていただきました。
★初めて観賞いたしましてよかったです。一番前の席で、道具係の人も大変ですね。俳優さんも美しい方でした。次が楽しみです。
★事前に本を読んだ(静)⇒今日の舞台での俳優の演技(動)⇒再度、本を読む(記憶に残す)
★「三屋清左衛門残日録」を鑑賞して「命の残りの日々・・まだ熱くあったかい云々」 このような言葉で本日の幕が開けられた。隠居の身となった清左衛門が藩内の二つの勢力に巻き込まれながらも職を辞しての身であるが故にかえって超然として眺め、人間性もさることながら老齢であればこその人間味のあふれる分別が働くといったところまでもよく表わされてあることに感動しつつ引き込まれていった。藤沢文学の傑作「三屋清左衛門残日録」を約三時間で演じることは大変であったろうと思う。金井奥之助、おうめの一件が特にていねいに演じられていた。われわれも人生の残り日をいかに迎え充実したものとするか、そんなことを考え合わせながら鑑賞させてもらった。尚、無外流の剣捌きも実に迫力に満ちていた。                
★今回の「三屋清左衛門残日録」は藤沢作品で土台がしっかりしている事もさる事なら役者さんの演技もすばらしく大変感動した。川口敦子の年を感じさせないお色気・・・しかし、それとは別に我が身の上と重なる所があり、よけいに感じ入ったのかも知れない。第一線を離れサンデ−毎日の身となって久しいが、舞台を見ていて、何度、あゝ、あんな酒を飲めたらなア、と思ったことか。片や、幼なじみの何を喋ってもよい、未だ現役の同輩、一方は小料理屋の美人おかみ、こちらも身の上話を聞いてやり、自分も家族にも話さない本音を語ると云う仲、男と女、身分も違う二人、、こんな人達に囲まれての隠居生活がしてみたい。羨ましい限りだった。
★ 私は芝居の事が良く分からないのですが、今日の俳優の方は若い方も見劣りを感じなかった。話の内容は、本でかなり知っていたり、テレビの仲代さんのイメ−ジが強すぎて、同じ物と思えなく、まったく別の物をみた感じがした。私のイメ−ジの時代劇のセットではなかったので、あまり時代劇の感じがなかった、でも前後の移動がほとんどで流れが止まらない分、見やすかった。娘奈津が残日録を読みながら芝居が進んでいく所が、分りやすくよかった。夜回りが、すご味があって良かった。


もどる