第49回例会
2008年2月14日
無名塾 『ドン・キホーテ』
演出/丹野郁弓 上演台本/岡山矢(新潮社刊 荻内勝之訳 「ドン・キホーテ」より ラ・マンチャにすむアロンソ・キハーノは、もう50歳に手が届こうとしている初老の田舎郷士である。
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人間には「ハムレット型」と「ドン・キホーテ型」があると譬えられる事を耳にすることがあります。40年前に『ハムレット』を演じた仲代達矢が、役者として、この『ドン・キホーテ』に挑みます。更に『ドライビング・ミス・デイジー』の演出家の丹野郁弓(劇団民藝)が演出を担当します、ご期待ください。
「ドン・キホーテ」の公演によせて
第49回例会は、無名塾の『ドン・キホーテ』である。 『ドン・キホーテ』という小説があることを知らない人はいないだろう。 聖書の次によく読まれる作品だとも言われている。
約5年前、ノルウエーのノーベル研究所と愛書家団体が行なった、世界54カ国の著名な文学者100人の投票による「史上最高の文学百選」のアンケートの結果は、セルバンテスの『ドン・キホーテ』が第1位を占めた。 2位以下の順位は公表されなかったが、シェークスピアの『ハムレット』、トルストイの『戦争と平和』などが並び、日本からは紫式部『源氏物語』、川端康成『山の音』が入選した、と伝えられている。
このように世界的にも高く評価され、日本でも名前はよく知られている作品だが、実際に原作をきちんと読んだ人はごく少数だろう。 なにしろかなりの長篇小説であり、岩波文庫版でも6冊になっている。でも、映画や劇になったり、要約本も出ているので、一定程度内容も知られているようだ。
すなわち、スペインのラ・マンチャに住む郷士アロンソ・キハーノが、来る日も来る日も、騎士道物語に読みふけり、とうとう自分がドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャという騎士だと思いこみ、サンチョ・パンサを従者に遍歴の旅に出かけるというもの。 風車を巨人と思いこみ、無謀な攻撃をして無残に敗退するなどの失敗を繰り返す場面も有名。
ほぼ同世代のシエ一クスピア(セルバンテスより17年後に生まれたが、死亡は同じ1616年)の代表作『ハムレット』の主人公の性格から、思索的で実行力に乏しい人物をハムレット型というのに対して、現実を無視して、ひとりよがりの正義感にかられて突進するのをドン・キホーテ型というのも対照的で面白い。
セルバンテスは、当時流行していた騎士道物語を打倒するために『ドン・キホーテ』を書いたといっている。 たしかにドン・キホーテは、騎士道物語にでてくる、スーパーマンのようなかっこうのいい騎士ではなく、パロデイとして、こっけいで、失敗を繰り返す騎士として描かれている。 しかし、ドン・キホーテが、なるほどこっけいな騎士ではあるが、おのれの手本とする騎士をまねるために、あえて苦しい冒険にいどむ、純粋このうえない、そして愛すべき人物に思われてきて、はたして作者のセルバンテスは、パロデイを書くことによって、ドン・キホーテをあざけり笑い、批判しているのか、それとも賛美しているのかわからなくなる。 多分、自らのあまり恵まれなかった人生、祖国スペインの世界中に植民地を持つ「太陽の沈むことなき大帝国」からの急速な衰退という現実を踏まえながらも、あくまで夢を追い続けたいというセルバンテスの執念が強いのだろう。
1605年、『ドン・キホーテ』が出版されると、発売直後から大評判となり、その年だけで6版を重ねた。 1612年には英語訳が、1614年にはフランス語訳が出ている。 しかし、セルバンテスは版権を売り渡していたため、いくら知名度が高まっても、経済的利益に結びつかなかった。1615年には、『ドン・キホーテ、続編』が出版され、翌16年、69歳で、セルバンテスは死去した。 なお、この年日本では徳川家康が死去している。
ひこね演劇鑑賞会 代表幹事:八田光雄
ドン・キホ−テ<story>
プロロ−グ ━場 割━
第一幕 第一場 冒険を求めて旅立つ
第二場 風車の冒険、げに恐ろしき
第三場 騎士が城と信じ込んだ旅籠での出来事
第四場 村人たち、本を吟味する
第五場 マンブリ−ノの兜を手に入れる
第六場 ドン・キホ−テ、囚人を解放
第二幕 第一場 予科学士カラスコの企み
第二場 獅子を相手に獅子奮迅
第三場 人形芝居の猿芝居
第四場 狩りをする美しい女性と出会う
第五場 騎士がサンチョに忠告を与える
第六場 サンチョ・パンサ、太守様になる
第七場 ドン・キホ−テ、侯爵との別れ
第八場 銀月の騎士との不幸な冒険
第九場 騎士殿の最後
☆☆☆ スト━リ━ ☆☆☆
ラ・マンチャにすむアロンソ・キハ−ノは、初老の田舎郷士である。
騎士道物語ばかりよみふけっていた影響で、ある日、彼は自分が遍歴の騎士であると思いこむ。
名もドン・キホ−テ・デ・ラ・マンチャと勝手に改め祖先伝来のボロ甲冑を身にまとい、
やせ馬ロシナンテにまたがり、農民のサンチョ・パンサを従えて、
いとしの姫ドルシネ−アを救うために冒険の旅に出る。
彼の決定的な時代錯誤と肉体の脆弱さは、行く先々で嘲笑の的となる。
やがて旅の果てを迎え、ドン・キホ−テは理想と夢の終焉とともに・・・・・。