第40回例会 2006年5月17日(水) 殺陣師段平 作/ 長谷川幸延
【運営サークル】
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【あらすじ】
島村抱月、松井須磨子らが活躍する芸術座を退団した澤田正二郎は、大正6年、新国劇を旗揚げする。新国劇の頭取(楽屋の世話役)の市川段平は、元は歌舞伎の殺陣師だった。澤田のために役に立ちたいと願うのだが、リアルな立ち廻りの確立を目指す澤田は、型にはまった段平の殺陣を受け入れようとしない。ある出来事をきっかけに、ようやく活躍の場を与えられた「国定忠治」は大阪で大ヒットして、新国劇は東京へ進出することになる。しかし、やはり澤田は殺陣を客寄せの道具としかとらえなかった。やがて殺陣に命をかける段平は澤田のもとを離れる決意をする。そんな時、髪結いで生活を支える妻・お春の危篤の報せが大阪から届いた…。
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「殺陣師段平」例会報告
今回の私たち運営担当サークルは、始めて全会議を夜に行いました。いろいろと不都合な点もあったかと思いますが、出来るだけ会議の内容を皆さんに報告できるように、ファクスにてお知らせしました。会議に参加できなかったサークルは、その他の形で参加してもらい、皆で協力し合えたことは良かったこと。また、最大の目標である「クリアに向けて最後まで」をモットーに、それぞれのサークルが自覚を持って取り組み、今回の入会には間に合いませんでしたが、次回から入会するとの約束をもらったサークルもあり、サークルの取り組みとして心強く思いました。
アンケート集計結果(回収145枚)
期待していた・・・83 期待していなかった・・・33
関心がなかった・・14 考えさせられた・・・・・32
面白かった・・・・71 楽しかった・・・・・・・59
難解だって・・・・13 退屈だった・・・・・・・・3
一口感想
*戦争ものや、殺陣師とかの暗いイメージのものが続き、うんざりです。もっと情緒ある美しいものを望みます。とにかく今回はセリフが聞き取れないのが私だけかと思ったが、帰りに同じ感想の人がありました。声は大きいが、聞き取れない、この問題はどうにも解決方法がないのでしょうか。せっかく入会してもらっても喜んでいただけないのでは私も責任を感じております。
*あまり興味のないジャンルでしたが、おもしろ、おかしく良かったです。最後は、少し、涙しました。またひとつ、楽しみが増えました。
*セリフが聞き取りにくい。声が大きすぎた。
*津嘉山さんがいいので、期待していました。期待通り声もすばらしくて、とてもよかった。見せ場もたくさんあって、楽しかった。
*少し聞き取りにくかった。さすが主役・・・。
*津嘉山さんの熱演が、すばらしかった!
*セリフが聞き難たかった。
*舞台装置はすばらしく、最初の「殺陣のシーン」も面白かったと思いますが、セリフが少しわかりにくいところがあり残念でした。
*実際飛ぶ唾が、あんなに見えるわけがない。本当は唾が飛んでるだろうが、見えるものではない。Realismに反する。気持ち悪い。しかし熱意がそのまま伝わる好演だった。
*前半のストーリーがわかりにくかった。大正時代の言葉、言い回しが、聞き取りにくかった。
*迫力があった。セットが良かった。豆腐屋のラッパ、三味線の音、良かった。
*感動した。泣けた。
*殺陣の熱意に感動した。
*今までの中で最高でした。感激しました。涙が止まりませんでした。また見せてください。
*殺陣師段平、名前だけは知っていた。でも何も先入観なしに見て、十分楽しめた。殺陣一筋にかける生き方、その人となりを、すばらしく描いていた。やっぱり生の演劇は、いいですね。
*津嘉山様の演技がとても板についていて、大阪弁がとても劇を引き立てている。皆様それぞれの適役で、見応えがありました。また、劇そのものに迫力があり、期待していた通りの立派な芝居でした。大正時代の雰囲気がよく出ていました。
*新国劇風の演出で楽しかった。芝居臭さの危険と紙一重。
*とてもよかったです。とても感動しました。これからもがんばってください。
*セリフが一部(特に女性の)聞き取れない。大筋には関係ないかも
*聞き取りにくいため、内容を理解するのに大変です。
*(前半)以前「無法松の一生」で感動しました。今回も楽しみにしていて、また元気に段平役を演じられ、やはり味のあるセリフで感動しております。(後半)殺陣師という仕事を最後までやり遂げる男の意地と熱意と今日にない義理を通すところなど、今の若者に見習ってほしい。
*とっても良かったです。次回例会も期待しています。
*さすがの一言!ラストシーンの「これがワイのリアリズムや」と、迫真の名演技。沢正もほかの人たちもそれぞれに、それなりの演技を披露されていたが、やっぱり段平さんはすごい、あれだけの不自由な立ち回りは、重労働だろうとお察しいたします。
*始まりしばらくは、ちょっと入り込めず、このままずるずると終わってしまうのかな?と思っていたが、後半、思い切り感情をゆすぶられ、ぼろぼろと泣けてしまった。これはいったい何なのだ?律儀で一途な男の世界?
津嘉山(段平)さんの、乗り移られたかのごとき迫真の演技?はたまた終焉に近づきつつある自分の人生にダブらせて?もしくはだんだんとクライマックスに、高め、盛り上げて行ったB,G,Mに?・・・ロビーに出たとき、壮年の男の人(複数)の涙をぬぐう様子が見えた。ちょっと感動。特に後半、リアリズムそのもの。津嘉山さんが毎回リアリズムを出し尽くして消耗していくのではないかと、案じられます。どうぞご自愛くださいませ。また、すばらしい舞台でお会いできる日を楽しみにしています。
殺陣師段平の公演によせて
次回例会は劇団青年座の「殺陣師段平」です。この劇は1949年(昭和24年)長谷川幸延が、新国劇の為に書き下ろした作品で、市川段平を島田正吾、澤田正二郎を辰巳柳太郎が演じ、新国劇の当たり狂言の一つになりました。
また映画にもなり、1950年(昭和25年)黒澤明脚本で、段平を月形龍之助、澤田を市川右太衛門、段平の女房お春を山田五十鈴が、演じています。
さらに1962年再び黒澤明脚本で、段平を中村雁治郎、澤田を市川雷蔵、お春を田中絹代が演じました。御覧になった方もあるかと思います。
殺陣師と書いて「たてし」と読むのはご存知のとおりですが、その仕事は時代劇の立ち回りを役者に指導する専門職です。現在日本を代表する殺陣師として活躍する國井正廣さん(この劇の殺陣も担当されています。)によれば、自称「殺陣師」を入れると50〜60人いるが、実際それだけで食べている人は20人位という事です。
新国劇は1917年(大正6年)澤田正二郎により新しい国民演劇をめざして創立された劇団です。
歌舞伎より現代的で新劇より大衆性をもつ中間的な国民演劇をめざしました。東京での旗揚げ公演には失敗しましたが、関西に移り大阪での公演は大成功。
その後1921年(大正10年)には再上京し明治座の公演で創立時の失敗を雪辱します。
1929年(昭和4年)澤田が急逝し、一時苦境に立たされますが、島田正吾、辰巳柳太郎の登場で再建されます。レパートリーは、「国定忠治」・「宮本武蔵」・「一本刀土俵入」・「沓掛時次郎」など時代劇が多く、それらの作品では立ち回りは演技と同等に重要な役割を果たしています。
この劇は新国劇創立時の座長澤田正二郎と殺陣師市川段平の芝居を通じた男二人の絆、信頼と相剋を中心に描いています。東京での新国劇旗揚げ公演に失敗した澤田正二郎は、関西で再起をはかろうとします。新国劇の頭取(楽屋世話役)の市川段平は、元は歌舞伎の殺陣師でした。
字も読めず女好きで酒びたりの段平は立ち回りのことしか頭にありません。新国劇の次の出し物に「国定忠治」が決まりました。
段平は、世話になった澤田の為に役に立ちたいと願うのですが、澤田は歌舞伎の型にはまった段平の殺陣を受け入れようとしません。段平には澤田が確立をめざすリアリズム演技が理解できずに悩み苦しみます。
ある出来事をきっかけに段平は、「国定忠治」の殺陣を任されます。その「国定忠治」は大阪で大ヒットして念願の東京へ進出することになります。
しかし澤田は、やはり殺陣そのものを客寄せの道具としかとらえていません。
段平は新国劇を離れる決意をします。
そんな時、髪結いで生活を支える妻お春の危篤の報せが届きます・・・・。
ひこね演劇鑑賞会 代表幹事:八田光雄