もどる

第36回例会 きょうの雨 あしたの風


     交流会での記念色紙贈呈  幸太役の内田夕夜さんから                 おはな役の阿部百合子さんから


         おもん役の青山眉子さんから                           交流会の記念撮影 クリックしてください

「きょうの雨あしたの風」例会報告

 「きょうの雨あしたの風」は10周年記念の特別例会、前例会の「少年H」運営サークルは26人もの退会者があったにもかかわらず、第5回運営サークルの集いの時にはクリア達成という状況の中、「私たちも」との意気込みを持って取り組みを始めました。ところが「少年H」例会後の退会者が10名、しかも運営サークルが新会員を誘わないうちからクリアできそうという見通しが出来て今ひとつ緊張感が欠けてしまいました。(新会員は「少年H」運営サークルの努力の結果として増えたというのに!!)その結果、運営サークルでは5サークル、5人の新会員しか迎えられませんでした。改めて、私たちはなぜ会員を増やそうとしているのか、努力しているのかを確認しなければと思いました。そうでなければ、本来、会員を増やすことは楽しいはずなのに、クリアは数にとらわれたノルマとなり喜びを感じるには程遠くなりそうです。でも、多くのサークルが複数で参加し、和気藹々と楽しく運営参加できたことは幸いでした。
 作品は、藤沢周平の描く江戸庶民の姿を鮮やかに表現し、心に深く刻まれるものでした。俳優座っていいですね。東京に行ったときは、俳優座劇場へ行ってみましょう。だって地方では、鑑賞会以外ではめったに観られませんもの。

きょうの雨あしたの風を鑑賞して
 今回はひこね演劇鑑賞会が創立して10周年目に当たるという、記念すべき第36回例会に、運営サークルの一員として参加する機会に恵まれたことは本当に良かったと思いました。自分の力に応じて、また、自分にできる範囲で参加し、会を盛り上げることが出来たのではないか、と思います。まして今回の演劇は、日本人として昨今忘れがちになっている日本古来の人情味あふれる裏長屋の時代劇で、なんとなく心暖まるほっとした時間をすごすことが出来ました。こんな感想を持ったのは私だけでしょうか。いや、そんなことはないと思います。まだまだ「ひこね演劇鑑賞会」のことをご存じない方が身近にたくさんいらっしゃるのではないかと思います。一人でも多くの人に、この会のすばらしさを伝えていき、入会を勧めたいものだと改めて考えさせられました。
〈サークル チドリの一会員〉

運営サークルの活動の状況

 

アンケート集計(回収117枚)

 期待していた・・・78  期待していなかった・・・22  関心がない・・・3
考えさせられた・・・33  面白かった・・・82  楽しかった・・・65
難解・・・1  退屈・・・2
「きょうの雨あしたの風」感想文

☆ 今回は10周年特別例会にふさわしいお芝居でした。とても楽しく、俳優さんも楽しそうに演じておられ、場面が沸いている感じでした。
今でも下町にはこんな風景が見られたら幸せでしょう!
俳優さんの動きがとてもユニークでユーモアがあって見る側は満足でした。
☆ 現代は殺伐とした社会である。昔のような(長屋暮らし)人々が助け合って生きていく社会であってほしい
  おはな・おとき…さすがウマイ!
  おしず…今後にも期待!
  おもん…三枚目ステキ
  作十 …ウマイ
 皆さん 素敵でした
☆ 最初から最後まで目が離せないお芝居でとても楽しませていただきました。皆さんの演技がお上手ですばらしかったです。笑いあり涙あり、それぞれ家族の話がテンポよく描かれており面白かったです。
  お花も頂き、ありがとうございました。これからも素敵なお芝居をしていってください。
☆ 江戸深川の人情の厚さ、温かさが現代は失われていて寂しいです。
  とてもすばらしい演劇でした。10周年おめでとうございました。
☆ 藤沢周平の作品(原作)でとても期待していました。日常の生活にありがちな風景の中に人として大切にしていきたいことがたくさんあったように思う。舞台設定も面白く内容もリズムがありとてもよい作品で楽しく拝見させていただきました。
☆ とてもよかったです。一つ一つの動作、しぐさがすばらしかったです。舞台の早変わりが大変だし、裏方さんの苦労が大変だと感じました。
  水を汲むしぐさ、お茶を飲むしぐさ、本物のようでした。
☆ それぞれの生活事情がリアルにまた面白く演じられ見ていて引き込まれました。時代劇もなかなか良いものと思いました。
☆ やはり原作藤沢周平の作品は良かった。人間模様も良かった。バックの音楽も大変効果が出ていた。7月例会、最高でした。
☆ 回り舞台でなかったのは残念でした。舞台を見るまではあまり期待していなかったが、演技の上手な役者ばかりで、予想外に実のある芝居で楽しめた。
☆ とても舞台展開が良くすばらしかった。役者さんたちもうまくて本当に楽しかった。藤沢作品のよさがとてもよく出ていた。またの来演を期待しています。
☆ 時代間が良く出て、あわただしい現代、あわーい落ち着いた気持ちになれてよかったです。
☆ 最初は登場人物が多くて混乱したけれど面白い構成の劇だと思った。印象に残ったのは作十の生き様、でもそれぞれの事件が解決した後は、それらが夢だったように日常が戻ってくる。そのあたりで、普通とは違う日々をすごして何かが得られたような気がしたのに、結局何が得られたのか、本当に何かあったのか…
  見終わってあいまいな感触の淡い余韻に浸れる気がするところが良かった。

「きょうの雨あしたの風」の公演によせて

 第三十六回例会は、ひこね演劇鑑賞会十周年特別例会の、俳優座『きょうの雨あしたの風』です。原作者の藤沢周平【1927〜1997】は、このところ山本周五郎に代わって映像や舞台でも人気の時代小説家です。

 この劇はひとことで言えば、裏長屋の人情時代劇と言うことになりますが、藤沢周平の短編小説数篇を組み合わせて一つの劇にしたものです。劇団のパンフレットには、『うしろ姿』『おばさん』『冬の終わりに』の三篇があげられていますが、その他にも、『贈り物』『遅いしあわせ』からも重要な登場人物がとり入れられています。

 脚本の吉永仁郎は、「それらを解体して一つのドラマに構成しようとしたのだが、そのどれにも隙がない物語に無駄がなく精密に組み立てられているから容易にばらしたり、くっつけたりできるものではない。 ・・・まあ何とかなるはずだと書き始め書き進めてはみたものの遂にどの話も頑強に形をくずさず、一つのドラマに溶け合おうとせず、書き上げてみると百四十枚の原稿用紙の中に三つの一幕劇が同居しているような奇妙な作品になった。」と書いています。

 一つは「おとき」の物語。下駄職人の亭主を一年ほど前に風邪であっけなく亡くし、子供もいないため一人で飯をつくって食べても仕方ないなどと生きる張合いを失って、四十前なのに歳よりも老けこんでしまっている。そんなおときがある日、道端で倒れていた若い男を助けてやり、一緒に住むようになる。

 二つ目は、同じ長屋に住む左官の「六助」。酒を飲むと誰彼かまわず連れてきて泊めてしまうという悪い癖の持主。それが女房およねの悩みの種、今度は汚らしい老婆のおはなを連れてきた。

 三つ目は、一膳めし屋の女中「おしず」。店の常連桶職人の重吉にほのかな想いを寄せているが、一方弟の栄次のバクチの借金に悩まされている。借金の取り立てにやくざが押しかけてくる。腹痛を介抱してもらった日雇い人足の作十はなんとかおしずの力になろうとするが・・・。

 この三つの物語をどう一本にまとめあげるのか、どうかみなさん自分の目で確かめてく下さい。

 なお参考までに、当時の裏長屋というのは大半は『九尺二間』といわれる間口九尺【2.7m】奥行二間【3.6m】の、僅か三坪程度の狭い建物でした。江戸の人口130万人、そのうち武士など70万人が85%の土地に住み、庶民は約半数の60万人で僅か15%の土地に押し込められていました。

 また、6年に一度は大火事があり、江戸の町の半分は灰となる状況でした。その他にも地震や洪水などの災害も多く、病気になっても高い医薬費が払えずあっけなく死んでいく人も多かったのです。そういう世の中であったからこそ庶民はお互いに助け合って生きていかねばならなかったともいえるでしょう。

                                                     ひこね演劇鑑賞会

                                                   代表幹事 八田 光雄

 

人 物 関 係 図









劇団俳優座からの提供写真より

もどる